■ "リザルダ"の休日 No.2 (第1部)
3人がわいわいやっている様子を、窓から見ているルシエ。
屋敷の3階。簡単な応接室のようで、テーブル1つとイス4脚がある。
"カチャ"と食器が置かれる音にハッとして、
テーブルでお茶の用意をしているハンナに気づく。
ハンナは、一度顔を上げてニコッとすると、またティーカップの用意を続ける。
ハンナ:お仕事をヒロシに任せるなんて、気の利いたことなさるじゃないですか
ルシエ:仕事のない日くらい、休んでいろ
ハンナ:ええ、だからこうやって、休んでます (ニッコリしながら、お茶を注ぐ)
ハンナを少し見て、好きにさせてやろうと、一瞬微笑み、また窓の外に視線を移す。
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ハンナ:ほんっとに、ルシエ殿の眼には、リザルダ様しか映ってないんですから
(と言いながら、ルシエにお茶を渡す)
ルシエ:あぁ、すまない (素直に受取る)
ハンナ:(自分のティーカップを持って、ルシエの見ている窓の隣の窓に向かう)
楽しそうですね
ルシエ:若いヤツには敵わないさ。 (一口飲んで) あ...
ハンナ:(くすっと笑って) 私のお気に入りのアップルティです
ルシエ:うまいよ
ハンナ:(笑顔で返事をして、窓の外を見る) リザルダ様…、
弟をご想像されてるのかしら…
ルシエ:! おい… (「何でそれを知ってる?」 やや表情が厳しくなる)
ハンナ:(テーブルに向かい、イスに座りつつ) 私が、あの方を見て、
妹を想像するように…
ルシエ:……
ハンナ:この大役をいただいてから、リザルダ様と何度もお話しました。
あの方は、何も隠されません。
いつでも私を気遣ってくれて、2人で喋ってると楽しくって、
妹が生きていたら...こんな感じかな、って思ったりして…
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ルシエは、窓際に立ったまま、ハンナの顔を見て静かに聞いている。
ハンナが幼い頃、病気で妹を亡くしたことは知っていた。
リザルダがヒロシたち年下の青年と一緒にいる時に、そういう感じ方ができるのは、
境遇が似ているからではなく、それ以前に、同じ女性だからではないか
(ルシエには思いつきもしなかったこと)、そう思える。
ハンナ:でも、あの方はもっともっとたくさん、大事なものを失われた…。
お1人になられてしまって…、私なんかより、ずっとお辛いはず…
ルシエ:……
ハンナ:だから、あの方を守るために、私なんかでも役に立つって…、
今、とても充実してるの…。 きっと、みんな、
あの方を守るために集まったみんな、
何かを失った悲しさや、その人の痛みが分かる人で…、
お1人で頑張ってるリザルダ様のために、頑張るんだわ…
ルシエ:…… (テーブルにつきながら)、オレの仕事は、
そうは思っていない者から彼女を守ることだ…
ハンナ:! はい… (「だから、私がいる…!」)
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"友軍の中にもリザルダの敵がいる"。ハンナやヒロシのように、
本当の意味でリザルダを理解してやれる人間ばかりではない。
リザルダのファンは多い。リザルダのために、士気も上がるだろう。
しかし、ルシエのように身辺警護をする者も、ハンナ(影武者)も必要なのだ。
ルシエ:すまない…、休めと言っておきながら、仕事の話で…
ハンナ:(ニッコリ笑う) いいえ、こうしてルシエ殿と「お茶」もできます。
あ、コレもおいしいですよっ (チョコを1つパクッ)
ルシエ:ふーん (すぐに1つ食べる) ...うん、うまい
ハンナ:あはっ、ルシエ殿、チョコお好き?
ルシエ:うん (紅茶を飲みながら返事)。 けっこう甘いもん好き
ハンナ:へ〜え、その情報、ケフェウスの女性陣に言いふらしちゃおっかな〜
ルシエ:ん? (「何で?」)
ハンナ:「ん?」って... (「は〜ぁ」呆れた顔)。
あんなにモテるのに、ルシエ殿って、浮いた話、全然聞かないね?
ルシエ:別にモテないよ
ハンナ:何言ってんです? 本人がご存じないだけですっ。
…ったく、ほんっとーに、リザルダ様しか見てないんだから!
ルシエ:仕事だよ、仕事 (チョコ もう1つ食べる)
ハンナ:ホントにそれだけ? ルシエ殿?
ルシエ:なぁ、そのルシエ「殿」っての、やめない?
ハンナ:(お茶をすすりながら) やめない
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