SEVENTH
-The Destination-
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エピソード抄録
【SEVENTH -The Destination 1-】
~ 1st ダルゼラ編 ~
■遺跡の前にて・・・ (第3部)
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前文明の遺跡発見現場に隣接する広大な平野部に、
ダルゼラ政府(および防衛軍ラーニタリア本部)を置く“首都”が建設された。
その首都カストルの郊外・・・
ラニータが、ただ静かに立って、遺跡を見つめる。
さとるが後方、少し離れた所に立ち、彼女の背中越しに遺跡を見る。
ここから1kmと離れていない場所に、ラーザと名乗る少女が倒れていた。
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かつて、自ら封印した力が、
またこの星とその文明を滅ぼす危険性を持って
拡散していってしまった。
・・・地球人が、他星の異種文明人が、封印を解いた...
何とかしなければ・・・
ここで本当にこの星が死んでしまったら、
何のために私たちが自ら姿を消したのか、、
意味がなくなってしまう・・・!
異性人の生活を観察するうち、デルベイン教という宗教を知る。
宇宙に旅立った人類の、
新しい心の拠り所となる考え方の1つであったのだろう。
“スペースエンジェル”
・・・宇宙の意思のもと、時間と空間を自在に操り、
宇宙の秩序を守るべく存在する高次元体
(・・・平たく言えば“神様”(^_^;)。
常に世を見守り、望まれる時のみ、救世に現れるという。
ラニータは正にそれであり、その仕来りに従うことにした。
地球人の姿を借り、救世のために降臨する...
しかし、体の構造の違う生命体の、
久方ぶりの生身の肉体を操るのは用意ではなかった。
全てを精神コントロール下に置くには学習を要した。
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ラニータ:本物の神様のようにはいきませんね (苦笑)
身体を思うように動かせず、倒れてしまったところを、
さとるたちエムリスのメンバー+リブ・シアルーに救出された、というわけである。
その時、口の利けない彼女は、リブの手のひらにラーザと名を綴った。
顔の表情も、彼女の心を映すには至っていない。
硬い、しかしどこか寂しげな、そして落ち着いた表情。
ラニータという高貴で偉大な、宇宙の意思と同調でき、
その個としての存在が許される(・・・やはり神様か?)聡明な生命体...
彼女本来の姿を自ずと表しているのかもしれない。
が、彼女は、嘆き悲しみ泣きもする。
苛立ち怒りもし、そして喜び楽しく笑いもする。 |
(さとる):この人・・・ 泣いてるんだ・・・・・・
ラニータの背を見てそう思う。
彼女の希望で(記憶を取り戻す手掛かりと言って)、
2人が出会った場所に連れて来てやった。
言葉が話せない・・・実際、発声のコントロールができない彼女が、
さとるに「話がある」といって(手のひらに文字を書き伝えて)
連れて来てもらった。
ラニータの肩が震えているわけでもない。
実際、涙を零しているわけでもない。
ただ静かに立つ彼女から、言葉では表せないような大きな悲しみを感じた。
(さとる):この人は・・・?
ラニータが過去との対面から、次の行動への決意を意識した時、
さとるには、彼女を包む空気が変わったように感じられた。
何か大きな、かつ高貴な威圧感を肌に受けた。
この人が何者なのか、何となく分かったような気がした時、
童顔で年下に見える彼女を「キミ」と呼ぶのをやめ、
さとる :貴女は・・・、ここに住んでいたんですか・・・?
ラニータは、体の向きを変えず、心の声で直接答える。
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ラニータ:・・・はい・・・
さとる :・・・そのことを・・・オレに・・・?
ラニータ:言葉・・・ (少し顔を上げたよう)
さとる :え?
ラニータ:・・・何千年、何万年ぶりに発した言葉が、
私と、私がここに残したもののことを正しく伝えられると良いのですが... (ゆっくり振り向く)
さとる :!! ・・・
ラニータ:私の言葉が届くということは・・・、この事実を知った時、
事の意味を理解し、それを受け入れられるだけの器を持った者であると・・・、
私はあなたを信じます...
さとる :・・・言葉・・・? ・・・そんな、オレは・・・
ラニータ:いいえ、・・・あなたは既にお気づきですね・・・?
私を理解しようと心を働かせてくださった・・・
さとる :・・・・・・ (ラニータと、彼女の背後の遺跡を見比べる)
ラニータ:だから、言葉が届くのですね・・・?
さとる :あ・・・
2人、互いの顔を見て、しばらく無言で立ったまま。
2人の間を風が、何度か吹き抜ける。
互いの存在と、この出会いという事実を認めるに充分な時間が経つ。
・・・人類史上最初の、異種文明人との接触の瞬間であった。
ラニータ:(一度静かに目を閉じ、そして穏やかな眼差しをさとるに向ける)
はじめまして、・・・私の名は、ラニータ・リィア...
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さとるが、静かに涙を零す。
さとる :・・・・・・・・・
ラニータ:・・・? ・・・涙・・・?
さとる :・・・そんな・・・・・・! ・・・ (目を閉じ、歯を喰いしばり、悲しみに耐えるように)
ラニータ:・・・涙の意味も・・・、私たちのものと同じようです・・・ (心で泣いている)。
お優しいあなたが・・・、私の代わりに泣いてくださって・・・・・・
さとる :・・・・・・こんな大きな悲しみと一緒に・・・、貴女はこの星を見守りつづけて・・・!
ラニータ:・・・ありがとう・・・、私のために泣いて・・・ (泣いて、言葉に詰まる) ・・・。
ごめんなさい・・・、・・・まだ、この体をうまく操れなくて・・・・・・。
あなたを悲しませるために・・・、
私があなたと出会ったのではないと・・・思いたいのです・・・
さとる :!! (ハッと顔を上げる) ・・・はい・・・!
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ラニータ:ここにあった・・・1つの石に・・・、あなた方は触れてしまった・・・
さとる :石?
ラニータ:あなたと、あなたのお姉さまがお持ちでしょう・・・?
さとる :!? ・・・これ (胸の辺り、服の上からペンダントを掴む)?
ラニータ:あなたのお母さまは、お気づきだったのです。
その石が、あなた方に災いをもたらすものであると・・・
さとる :母さんのことも知ってるのですか!?
・・・姉さん? ・・・姉さん、って・・・!?
ラニータ:私にも、お母さまの不思議な力は理解できませんでした・・・。
あなた方の種の中でも、特殊な能力を持たれた生命体で
あったのだろうとしか・・・
さとる :・・・母さん・・・?
ラニータ:そして、心ない者たちが、その特殊な力を研究対象とし、
利用しようとした時、あなたのご家族が離ればなれになってしまう道を、
お母さまは選ばれたのです
さとる :!? ・・・どうして・・・?
ラニータ:あなたを、その石の持つ邪悪な力から守るため・・・!
私はそう理解しています・・・
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さとる :・・・・・・ (ラニータの言葉を受け入れる)
ラニータ:すごい方ですね・・・、あの石の邪気を浄化し、
あなた方姉弟にお守りとして授けられた・・・。
そして、その2つのお守りは、互いを呼び合い、
お2人を再会へと導くのです・・・
さとる :あなたは・・・全て知っているのですか・・・?
あなたは、・・・何故、今・・・オレの前に現れたのですか・・・!?
2人の間を風が吹き抜ける。
しばらくの間、会話はない。
ラニータ:(目を閉じて一吹きの風を感じた後、ゆっくりと目を開き、
顔を上げる) ・・・私は、・・・あなた方の言う“神様”ではありません。
あなた方と同じ、かつてこの星に存在した、
1つの生命体に過ぎません・・・、これは事実です・・・!
さとる :・・・はい・・・ (納得している)
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ラニータ:そして、ここからは私なりの考えです・・・。
私は・・・、あなたのお母さまに呼ばれた気がしたのです・・・
さとる :!?
ラニータ:私に、こんなことが (手を少し上げ、自分の体を見る) できてしまうのも、
あの方が力を与えてくださったのではないか・・・、
私が、あの石の不始末に対して、何とか責任を取りたいと願った・・・、
その声を聞き届けてくださったのではないか・・・!
さとる :そんな、あなたに責任なんて!
・・・オレたちが勝手に遺跡に触れて、大事な封印を解いてしまったんだ・・・!
ここで場面転換。
この後、リブ・シアルーがラーザを連れて行くまでの間の2人の会話は、
さとるの回想シーンの中で描かれる。
リブが、単独飛行でラーザを引き取りに来る。
「お姉ちゃんの記憶を取り戻す!」と言って、Dr. セルラードの元へ。
Dr. は、自分の意思のままに体を動かせていないラーザを不思議に思う。
以降、ラーザはリブの傍(基本的にはアルファード)に。
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・・・さとるの回想。夜、エムリス基地の屋上、星空のもと、1人で...
〈ラニータ:“神様”というなら、あの方こそそうではないか、と・・・〉
(さとる):・・・そうじゃない・・・。あの人は謙遜してああ言ったんだ・・・。
宇宙の意思と同調(シンクロ)し、1個の生命体として存在し続けることを許された、
偉大で、聡明な知的生命体・・・ (母の形見のペンダントを見つめる)
〈ラニータ:私は、あなた方の歴史に干渉してはいけないと思っています。
・・・だから、この星を、滅びの道から救うことができる可能性を持つあなたに、
こうして接触できるように、力をいただいたのではないか・・・〉
(さとる):・・・オレたちを救うために、・・・この星を再び守るために、
あの人は、もう一度この星に来てくれたんだ・・・!
・・・今、・・・母さんが・・・そう教えてくれたような気がする・・・。
(ペンダントを上方にかざし、透かして空を見るようにして)
じゃあ、母さんはラニータ・リィアの生まれ変わり・・・?
・・・・・・・・・ (返答を待つような時間をおいて)、それも違うか・・・。
母さんがこのお守りを作った時に力尽きてしまったことを・・・、
あの人は、オレに伝えに来てくれたんだ・・・・・・
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